毎年恒例、2025年のブルーリボン賞・ローレル賞の投票が現在、受け付け中となっています。
(※投票は鉄道友の会の会員のみ)
候補車両はSNSなどでも周知の事実となっておりますが、こちらでも簡単に紹介していきたいと思います。
鉄道車両の栄誉! ―ブルーリボン賞とローレル賞
ブルーリボン賞とは
と、その前に先におさらい。
ブルーリボン賞は、鉄道友の会が1958年6月20日に制定した日本の鉄道車両に与えられる賞です。前年(今回なら2024年)に新しく営業運転を開始した鉄道車両の中から、鉄道友の会会員の投票により選定されます。
選ばれるのは「1形式のみ」。
投票の流れとしては、まず選考委員会により候補車両が選定され、会報「RAIL FAN」によって会員に告知されます。会員は4月の定められた期間内に投票を行い、最も得票数の多い車両形式が選ばれます。
ブルーリボン賞は特急形車両などに対する人気投票となる傾向があり、見栄えや話題性のある車両が選ばれやすい特徴があります。
これまでの最多受賞者は近畿日本鉄道の9回となっています。
ローレル賞とは
一方、ローレル賞は、1961年2月18日に制定された賞で、主に技術面で優秀な車両を評価するために設けられました。
ブルーリボン賞が人気投票という側面があるのに対し、こちらは技術的に優れた通勤形・近郊形車両を評価する必要性から生まれました。
現在では、ブルーリボン賞の選定候補車両でブルーリボン賞に選ばれなかった車両から、得票数に関わらずブルーリボン賞選考委員会が選定します。
技術面や先進性に優れた車両が選定される傾向にあり、貨物用車両や路面電車、中小私鉄の受賞が多いのが特徴です。
またブルーリボン賞と違って複数が同時に選定されることもあります。
2024年に登場した注目の新型車両たち
ということで候補に上がった鉄道車両を一挙にご紹介。
仙台市営地下鉄 3000系
仙台市地下鉄南北線用として2024年10月24日から営業運転を開始した通勤形電車です。4両編成(2M2T)で直流1,500V、最高運転速度75km/hで運行しています。制御方式にはハイブリッドSiC素子VVVFインバータ制御を採用しており、2024年度グッドデザイン賞も受賞しています。
JR東日本 E8系新幹線
2024年3月16日から運行を開始した新型車両で、デザインコンセプトは「豊かな風土と心を編む列車」です。山形新幹線、東北新幹線で「つばさ/なすの」として運行しています。営業最高速度300km/hでの走行に対応するため、空力解析により最適化された「アローライン形状」を採用しているのが特徴です。
JR東日本 サロE233形0番代・サロE232形0番代
中央快速線用のグリーン車として登場した車両です。3000番台車よりも台車間距離を延長することで、ダブルデッカー部の座席が1列増加している点が特徴です。着席定員は階上部40名、階下部38名、平屋部8名+8名、合計94名となっています。
JR西日本 273系 「やくも」
381系の置き換えを目的として導入された車両で、2024年4月6日から特急「やくも」で運用されています。制御付自然振り子方式を採用した振り子式車両であり、JR西日本の振り子式電車としては約27年ぶりの新形式です。「”特急やくも”のブランディング」として、2024年度グッドデザイン賞「グッドデザイン・ベスト100」も受賞しています。
JR西日本 キハ189系 「はなあかり」
2024年10月から運行を開始したJR西日本の新しい観光列車です。キハ189系を檳榔子染色と四季の草花をモチーフにしたデザインに改造したものです。季節ごとに異なるルートで運行されます。
JR西日本 DEC700形
JR西日本初の電気式気動車です。ディーゼルエンジンで発電機を回し発電した電力でモーターを駆動する方式を採用しています。電車と気動車のシステムを部分的に共通化することで、メンテナンスの効率化や品質管理強化、技術向上を実現している点が革新的です。また、将来的にハイブリッド方式への変更にも対応している点も注目されています。
近畿日本鉄道 8A系
近畿日本鉄道の一般車両(通勤電車)として2024年10月7日から運用開始した車両です。4両編成(2M2T)で最高運転速度110km/h、制御方式にはハイブリッドSiC素子VVVFインバータ制御を採用しています。
ベビーカーや大型荷物向けの「やさしば」スペースの設置など、より乗客に優しい設備が採用されています。車両デザインは株式会社イチバンセン。
阪急電鉄 2300系2代目
2024年に登場の神戸線、宝塚線の新型通勤車両です。車いすスペース拡大、吊革を使いやすく高さを下げて視認性を良くするなどバリアフリー設備が充実しています。電装機器も性能の進化により消費電力量が約60%削減することに成功しています。
9300系以来となるセミクロスシートの特急車両で、阪急で初となる座席指定サービス「PRiVACE」用の回転リクライニングシート車両を一部編成に連結している点が特徴です。2350形「PRiVACE」車両は、2024年度グッドデザイン賞を受賞しています。
JR九州 2R形 「かんぱち・いそろく」
2024年にキハ125-24が特急「かんぱち・いちろく」に改造され、2R形(2R-80)に改番された車両です。黒に金帯(かんぱち)の塗装が採用され、2024年4月27日に初運行が行われました。
福岡市営地下鉄 4000系
福岡市地下鉄空港線・箱崎線用の通勤形電車として2024年11月29日に営業運転を開始しました。「一人ひとりにやさしい移動空間~福岡の次世代へ向けて~」をコンセプトに設計されており、特筆すべきは営業列車での本格導入としては世界初となる「同期リラクタンスモーター」を採用している点です。
熊本市交通局 2400形
熊本市電(路面電車)用に導入された超低床電車で、2024年11月24日に運行を開始しました。全長21.35mと輸送力を確保した点が特徴です。
今回の受賞は?予想してみると・・・
これまでの受賞傾向を見ると、ブルーリボン賞は「華やかで目立つ特急形車両」、ローレル賞は「技術的に革新性のある車両」が選ばれる傾向にあります。
ということをふまえて、今年の候補を見てみると・・・・・・
ブルーリボン賞受賞予想
ブルーリボン賞の有力候補としては、やはり人気であるJR東日本E8系新幹線かな?と思ったりします。
知名度も人気度も「新幹線」は抜群に高いですもんね。もちろん過去のデータを見ても、新幹線は多くブルーリボン賞を受賞してきた実績があります。
一方、273系は約27年ぶりとなるJR西日本の振り子式電車であり、特急「やくも」のブランディングとしてグッドデザイン賞も受賞しています。
SNSでもよく取り上げられてバズっていましたもんね。
ローレル賞受賞予想
ローレル賞の有力候補としては、JR西日本DEC700形と福岡市交通局4000系でしょうか。
DEC700形はJR西日本初の電気式気動車であり、電車と気動車の技術を融合させた革新的な車両です。
将来のハイブリッド化にも対応するなど、次世代の地方交通を担う技術として評価される可能性が高いでしょう。
福岡市4000系は、世界初となる「同期リラクタンスモーター」の営業列車への本格導入を実現しました。
この革新的な技術によって省エネ性能が大幅に向上しており、技術面での評価が高いと考えられます。
ぶっちゃけ、どれが受賞してもおかしくない粒ぞろい
2024年は新幹線車両から路面電車まで、幅広い分野で鉄道が登場した一年でしたよね。
環境のための省エネや快適性、バリアフリー化というのはもはや常識ですし、
さらにインバウンド需要への多言語化、列車内での事件多発をうけての車内安全、さらに働き手不足を見据えた省力化などなど。
求められる水準、要件はどんどんと高くなっています。場合によっては数十年先まで長く使うものと考えれば、設計する方は本当に大変な仕事だと思います。
今年の候補に上がった車両はどれも甲乙つけがたい優れた車両ばかり。結果発表は5月、今から楽しみですね。
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