とさでん交通がつい先日、「スプレーアート」を題材にした新たな鉄道ラッピングを披露しました。
が、これがいわゆるスプレーアートというか、一見すると”落書き”と見分けがつかないほど奇抜であったため……早速ネット上では賛否両論の議論が巻き起こっています。
【アートカラー電車広告10/1まで運行】🚋
東京でギャラリースペースの展開、クリエイターの応援事業などを行っている「㈱ネオン企画」さまが運営する「高知OKYAKUさま」よりスプレーアートカラー電車広告が運行します🚋#アートカラー電車 #スプレーカラーアート pic.twitter.com/dR0221SN34
— とさでん交通経営企画室 (@kikaku20141001) September 3, 2023
確かにラッピング車と知らない人が見れば、「落書きされたんでは!?」と驚くほどのインパクトあるデザインですよね。私もびっくりしました。
ちなみにラッピングを手掛けたのはアート、クリエイター事業を行うOKYAKU。
インスタアカウントでは作業風景のPVが公開されています。
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アートについては私は語るほどの知識も知見もないんですけれども、要所要所を見ていくと行き先板や標識灯は綺麗にマスキングされていたりしますし、その点は明らかにプロのアーティスト(というか塗装屋さん)によるものだと識別できます。
インスタでは作業風景のPVも公開されています。事前デザインを決めて、そしてそれに沿ってマスキングや養生をしっかりして塗装している点からも、いわゆる落書きと言われるグラフティとは全く異なるものであることが分かります。
ちなみに以下のような文章が有りまして
グラフィティーと聞くと、そのイリーガルな感じばかりが目立ち、忌み嫌われがちであるが、社会性やアート性、なにより歴史のあるメディアであることも知ってほしい。犯罪行為であることを、肯定するわけではなく、それが内包する、純粋なクリエーションを掬い取って、見ていただきたい。故に我々は、合法的に、列車にグラフィティーを描き、走らせる。朝通勤する人々が、ランチに向かうご婦人たちが、ほろ酔いのサラリーマンが、日常生活に溶け込んだその列車に乗り込む姿を見てみたい。通学途中の学生には、その違和感をクスッと笑ってもらいたい。その違和感がこの先の人生の、ある瞬間にふと思い出されればいいなと。
賛否両論、批判があるのも見越しての作品であることが分かります。
また、わずか1ヶ月だけの運行ということですので実験的な要素もたぶんにあるんではないかなーと思ったりしています。
スプレーアートと落書きの違いは?
そもそもスプレーアートは、ペイントスプレーを使用して制作されるアートの形式の一つです。最近はTV番組(プレバト)でも絵画対決の一つとして披露されたことから、認知度は高くなっているのではないかな?とは思います。
ちなみに使うのは基本的にはスプレー缶、もしくはエアブラシのみ。筆などは使用しないことが多いようですが特に明確な決まりは無い模様。今回のラッピング電車でもペンキ筆を使っている姿が記録されていますしね。
ただあくまでも身軽に、かつ体を大きく使って大きなキャンパスへ描画することがスプレーアートの特徴であり醍醐味となっています。
ちなみにスプレーアートと落書き(グラフィティ)は、両方ともストリートアートのカテゴリに入ることが多いわけですが、いくつかの違いがあります。
スプレーアート
一般的には許可された上で、計画的に制作されるアートであり、芸術的な表現やメッセージを伝える目的で作成されます。また高度な技術や独自のスタイルを持つアーティストによって制作されることが大半です。
今回のラッピング電車、アート電車はもちろんこっち。
落書き(グラフィティ)
落書きは、名前やシンボル、メッセージなどを簡単に描く行為を指すことが多く、芸術性よりもメッセージの発信を主体においていることが多いと言われます。愉快犯であったり、テリトリーの顕示を目的としていることも。
建築物や廃墟をキャンパス代わりにするということからも問題視され、またもちろん日本国内では違法というか犯罪行為です。
余談:「落書き」をした場合の刑罰は
鉄道車両に落書きをする行為は、日本の法律で禁止されており、それに違反すると刑事罰や民事上の責任を負うことになります。
- 刑事罰
- 器物損壊罪:鉄道車両に落書きをする行為は、刑法第234条に定める器物損壊罪に該当する可能性があります。これに該当する場合、懲役または罰金に処されることが考えられます。3年以下の懲役または30万円以下の罰金。
- 民事上の責任
- 落書きによって鉄道会社に損害が発生した場合、損害賠償責任を負う可能性があります。具体的には、清掃や修復にかかる費用など、実際に鉄道会社が被った損害の額を支払う必要があります。
- また、鉄道会社が運行を一時的に停止して清掃や修復を行う場合、その間の運行損失についても賠償責任が発生する可能性があります。
というわけで、罰則としては結構重いです。
SNSでの反応は??
ざっくり調べてみました。おそらく皆さんが想像するどおりの反応のようですね。
肯定派の視点
- とさでん交通を利用する一人ですが、人手お金不足ながらも安全安心を第一に運行してくれているだけで有り難いです。
- 利用者増加の施作はどんどんやったらよろしいです。応援しています。
否定派の視点
- 高知の街の質が低下した印象を与える企画が存在しているようで、高知を愛する私としては非常に残念。
- ただの落書きされた車両にしか見えません。車庫への不正侵入と落書きが増えないことを願っています。
- このような事案を公式のアートとみなすなら、他の企業でも落書きが問題となる事例が増える恐れがあります。落書き電車の存在は「落書きしてもいい」という誤った考えを広める可能性があります。
- 公共交通機関など影響力のある場所に合法的であってもペイントすることは、大きな影響を及ぼす可能性があります。
- これを見た人は落書きが容認されていると勘違いするのでは?
- 分かりづらい。文字が判読できるような工夫が必要では。
とまぁ、SNSを見る限りは批判意見が大勢を占めています。
ただ完全に賛否で二分しているのではなくって、「絵柄が可愛いければなー」という声も散見されます。
批判を含めてのアートなのか、否か
私としては、おそらく批判的な声が起きるのは織り込み済みのプロジェクトなんじゃないかなと思います。
むしろアーティスト側としては、公式に発信している「違和感」という言葉に集約されるように、この膨大な情報の流れの中で、少しでも目と手を止めてもらうことが目的なんじゃないだろうか、と。
朝通勤する人々が、ランチに向かうご婦人たちが、ほろ酔いのサラリーマンが、日常生活に溶け込んだその列車に乗り込む姿を見てみたい。通学途中の学生には、その違和感をクスッと笑ってもらいたい。その違和感がこの先の人生の、ある瞬間にふと思い出されればいいなと。
ともすればこの私も含めて「ん??」と思った顔、立ち止まった人々。SNSで声を上げる人々。
それこそがプロジェクトとして求めていた意図の一つだったんじゃないかなーと思ったり。
話題になった時点で目的は達成したと言える可能性も
あと、鉄道ファン以外にしてみれば地方ローカル線ってものすごく認知度が低いわけです。
ましては生まれも育ちも縁のない土地なら尚更。
私も子どもが生まれて鉄道の絵本を読まなければここまで鉄道があるって知らなかったですもん。ぶっちゃけ、「JRかそうでないか」くらいでした。いや、本当に。
余談ですがネトゲーで女子になりきったオタクが「オススメの化粧品は?」という問いに「ドモホル◯リンクル」って答えたという逸話みたいな。
興味ない分野の知識ってそういうもんです。
って考えれば、例えばこのスプレーアート電車がSNSでそこそこバズって、もしかするとニュースになったりして、例えばそれが批判的な論調に傾いていたとしても。
世間的に少しでも名前を認知されてもらえば良し……という思いもあるのかもしれません。ここはあくまで私の想像ですけれども。
そういえば元々、土佐の人は反骨精神の強い一本気という土地柄と言われています。土佐出身の幕末偉人の顔ぶれをみると想像しやすいとは思うんですが、まさに「いごっそう」的な。
というか、こうやって記事ネタにした私は、とさ電交通さん、そしてOKYAKU ART TARIN PROJECTの手のひらの上で踊ってたってことになるということに??
著者情報
ハル 子供5人のママ。第一線から外れた医療職。場末のブロガー。 画像は写真をスマホアプリでイラスト化 |
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